こんにちは。乳がん専門トレーナーのおくまつです。
今回は、乳がん経験者向けの疲労と運動に関するトピックです。少し専門的な部分もありますが、なるべく医学系論文にもとづいてお話ししていきたいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
1.乳がん経験者が疲労を感じる理由
様々な要因が複雑に絡み合って疲労感を生んでいます。代表的なものとして、乳がんの治療の過程で、炎症を引き起こすタンパク質が活性化し、神経に作用して疲労感が生じると報告されています(1)。
がん病院で世界的に有名なMDアンダーソンがんセンターから発表された論文では、抗がん剤や放射線治療に伴い、血液中の炎症マーカーや疲労感が上昇したと報告されました(2, 3)。
一般的に抗がん剤や放射線療法の後は、時間の経過と共に疲労感が減ってくると言われていますが、20~30%のがん経験者は治療から5年以上経過しても疲労感があると訴えており、長期的に疲労を感じるケースもあります。
上記の通り、がん治療に伴う特殊な形で疲労が発生する可能性があり、一般的な加齢の影響だけでなく、がん特有の疲労感があることも考慮し、対策を立てることが重要です。
2.運動と疲労の研究
2019年に出版された「がんのリハビリテーションガイドライン」では、疲労改善のために運動が推奨されており、根拠の強さを示すレベルは最上位のAに設定されています。
このガイドラインは複数の専門家が、世界中の研究を調査し、議論した結果、導き出される結論です。運動が疲労改善に推奨されていることは大きな意味合いを持ちます。
また、世界的医学雑誌の報告では、乳がん経験者を運動群と非運動群に分けて12週間追跡したところ、運動をおこなった群は疲労が改善し、非運動群の疲労に改善はみられませんでした。
実際、私たちも2016年に日本人乳がん経験者の方を対象に、運動教室を開催しており、運動が疲労感に与える影響を調査しました。
12週間の運動プログラムを通して、運動教室に参加した方の疲労感は改善していきました。一方で、運動教室に参加しなかった方の疲労感は変化しませんでした。
単発の研究だと偶然が重なって、たまたま運動が疲労改善に効果的だった可能性もありますが、複数の研究結果をまとめた論文でも、運動が疲労改善に効果的だったと報告されています。
2019年にアメリカで発表されたがんサバイバー向けのガイドラインを参考にすると、疲労改善には①ウォーキングなどの有酸素運動②筋トレ③有酸素運動+筋トレの組み合わせが効果的です。
このガイドラインは2010年に発表された内容の改訂版で、最新の研究が反映されています。また、新しい知見として、筋トレも疲労改善に効果的であることが分かってきました。
3.疲労改善におすすめの運動
今回は自宅でいつでも簡単にできる筋トレを3つご紹介します。
「えっ、筋トレ?!」と思われる方もいると思いますが、筋トレが疲労改善に効果的な研究は数多く出ていますし、筋トレは体脂肪率を減らして、筋肉量を良い意味で少し増やしますので、見た目の引き締め効果も期待できます。
参考文献
1) Julienne E Bower, Cancer-related fatigue--mechanisms, risk factors, and treatments., Nat Rev Clin Oncol (IF=53.3), 2014.
2) U.S. News., These Are the U.S. News Top Rated Hospitals for Cancer in the U.S., 2020.
3) Xin Shelley Wang et al., Inflammatory cytokines are associated with the development of symptom burden in patients with NSCLC undergoing concurrent chemoradiation therapy, Brain Behav Immun (IF=6.6), 2010.
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